「ぴたっ」と「ぴったり」。
どちらも、私たちが何気なく使っている言葉です。
でも、この二つを並べてみると、ちょっと面白いことに気づきます。
パズルのピースが、
ぴたっ。
とはまる。
そして、はまったピースを見ると、
ぴったり。
……あれ?
「ぴたっ」は、はまった瞬間。
「ぴったり」は、はまったあとの状態。
似ているようで、少し違うものを見ているようです。
一瞬をとらえる言葉

ほかの言葉も見てみます。
パズルのピースがはまる。
ぴたっ。
帽子を頭にかぶる。
すぽっ。
シートベルトの金具がはまる。
かちっ。
閉じていた目を開ける。
ぱちっ。
どれも、とても短い一瞬です。
何かが変化する、まさにその瞬間を切り取ったような言葉です。
では、そのあとを見ると?

今度は、その一瞬が過ぎたあとの様子を見てみます。
パズルのピースは、きれいにはまっている。
ぴったり。
帽子は、頭をすっかり覆っている。
すっぽり。
きちんと組み合わさって、しっかりしている。
かっちり。
目が大きく開いている。
ぱっちり。
こちらは「何かが起きた瞬間」というより、そのあとに残っている状態を表しているように見えます。
並べてみると、見えてくる
普段は別々に使っている言葉ですが、こうして並べてみると――。
| その瞬間 | そのあと |
|---|---|
| ぴたっ | ぴったり |
| すぽっ | すっぽり |
| かちっ | かっちり |
| ぱちっ | ぱっちり |
なんだか、ひとつの小さな流れが見えてきませんか?
ぴたっ → ぴったり
すぽっ → すっぽり
かちっ → かっちり
ぱちっ → ぱっちり
一瞬の変化と、そのあとに残る状態。
日本語は、その両方を別々の言葉でとらえているようにも見えます。

偶然? それとも日本語の面白い傾向?
もちろん、すべてのオノマトペがこのような組み合わせになっているわけではありません。
そして、このいくつかの例だけで「日本語にはこういう法則がある」と言うこともできません。
それでも、こうして並べてみると、ちょっと気になります。
日本語には、「何かが起きる瞬間」だけではなく、「そのあと、どうなっているか」まで細かくとらえようとする面白い傾向があるのでしょうか。
答えはそんなに単純ではないのかもしれません。
でも、普段何気なく使っている言葉を少し違う角度から眺めてみると、今まで見えていなかったものが見えてくることがあります。
「瞬間」の、その先へ
「ぴたっ」と何かがはまる。
そこで出来事は終わったように見えます。
でも、そのあとには「ぴったり」とはまっている状態が残っています。
変化した瞬間。
そして、変化したあとの静かな状態。
私たちは普段、それを意識することなく言葉で使い分けています。
「ぴたっ」と「ぴったり」。
たった二つの言葉を並べてみるだけでも、日本語が世界をどんなふうに切り取っているのか、少しだけ見えてくる気がします。



Comments