「かちかち」
この言葉を聞いて、どんなものを想像しますか?
石。
金属。
歯。
何を思い浮かべるかは人によって違うかもしれません。
でも、なんとなく「硬いもの」を感じた人は多いのではないでしょうか。
では、ちょっと不思議なことを考えてみます。
私たちは、何も触っていません。
ただ「かちかち」という言葉を聞いただけ。
それなのに、どうして「硬さ」が分かるのでしょう?

「かちかち」と「とんとん」
二つの言葉を比べてみます。
かちかち。
とんとん。
どちらも、何かが繰り返し触れたり、ぶつかったりする様子を表すことができます。
でも、同じようには感じません。
「かちかち」からは、硬いもの同士が当たっているような感じ。
「とんとん」からは、もう少し軽く、やさしく触れているような感じ。
音を聞いているはずなのに、頭の中では触れたときの感覚まで違っているようです。


では、「ごん!」と「ぽん!」は?
もう少し試してみましょう。
ごん!
ぽん!
どちらも何かが当たったときに使える言葉です。
でも「ごん!」には、何か重くて固いものがぶつかったような感じがあります。
一方、「ぽん!」はもっと軽い。
場合によっては、少し弾むような感じさえします。
ここでも、私たちは音だけを聞いているはずなのに、なぜか重さや力の強さまで感じています。

音の中に、何が入っている?
「かちかち」
「とんとん」
「ごん!」
「ぽん!」
こうして並べてみると、短い音の中から、私たちはずいぶん多くのものを感じ取っていることに気づきます。
硬いか、やわらかいか。
重いか、軽いか。
強くぶつかったのか、そっと触れたのか。
一度だけなのか、何度も繰り返しているのか。
さらには、弾むような感じまで。
もちろん、いつでも同じ意味になるわけではありません。
使われる場面によって、受け取る印象も変わります。
それでも、ひとつ気になることがあります。
なぜ私たちは、音からこれほどたくさんの「触った感じ」を想像できるのでしょう?

「カ」と「チ」が硬いの?
ここでもうひとつ、疑問が出てきます。
「かちかち」が硬く感じられるのは、硬いものがぶつかる音を「かちかち」と呼んできたからなのでしょうか。
それとも、
「カ」「チ」という音そのものに、どこか硬さを感じさせるものがあるのでしょうか。
では、「ごん!」が重そうなのは?
「ぽん!」が軽そうなのは?
私たちは長い間日本語を使ってきた経験から、そう感じるようになったのでしょうか。
それとも、人が音そのものから受け取る感覚にも何か関係があるのでしょうか。
ひとつの理由だけで説明できることではないのかもしれません。

耳で聞いて、皮膚で感じる?
もう一度、「かちかち」を考えてみます。
まず、言葉を聞く。
すると、硬いもの同士が触れる情景が浮かぶ。
そして、その情景を思い浮かべた瞬間、硬さまで想像している。
もしそうなら、私たちの頭の中では、こんなことが起きているのでしょうか。
音 → 情景 → 触感
耳から入ってきたはずの言葉が、いつの間にか皮膚で感じるような感覚に変わっている。
そう考えると、オノマトペは単に「音を言葉にしたもの」ではなく、いくつもの感覚をつなぐ小さな橋のようにも見えてきます。

私たちは、本当に「音」だけを聞いている?
「かちかち」を聞けば、硬い。
「ごん!」を聞けば、重い。
「ぽん!」を聞けば、軽い。
普段なら、そんなことをいちいち考えることはありません。
ただ自然に、その場面を思い浮かべています。
でも、少し立ち止まってみると不思議です。
硬さは、耳では聞けません。
重さも、耳では測れません。
やわらかさも、本来は触れて感じるものです。
それなのに、私たちは「かちかち」「とんとん」「ごん!」「ぽん!」という短い言葉から、それらをなんとなく感じ取っています。
次に「かちかち」という言葉を聞いたとき、少しだけ意識してみてください。
あなたが感じているのは、本当に「音」だけでしょうか。



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